車椅子クッションとして、円座を使用したことはありますか?

褥瘡が出来ている部分の負担を減らすために、使用したことがあります
という声をよくおうかがいします。私も利用者様のお宅におじゃますると、円座を使用されていたという場面に遭遇することもありました。
一方で、

円座は褥瘡予防にはならないから使わないようにといわれました
このようなお声もおうかがいするようになってきました。
結論から言うと、円座は褥瘡予防にはならず、むしろ褥瘡を助長するといわれており、日本褥瘡学会褥瘡予防・管理ガイドラインでも推奨されないとなっています。
しかし、なぜダメなのか、なぜダメなのに使用している人が一定数おられるのかについてご存じの方は少ないです。
この記事では、円座はなぜダメなのかを理論的に説明し、その上でなぜ現在でも使用している方がおられるのか、代わりにどのようなクッションを使用すればよいのかについて解説していきます。
この記事を読めば、車椅子クッション選びに無駄な時間やお金をかけずに済みます。
私の知識を集約して作成しました。円座についての知識を深めたい方は最後まで読んで下さい。
円座とは?

円座とは、かかとの骨や、尾てい骨などに使われるドーナツ型のクッションのことをいいます。
その形状から、穴の開いた部分は圧がかからないため、負担は軽減されるとされている商品が多いです。
産後の腰痛や会陰切開・裂傷の痛みや、痔の痛みを軽減する効果についてはエビデンスが得られており、実際に利用されている方も多いかと思います。
しかし、褥瘡予防という観点からみると、「浮かせて圧がかかっていないから大丈夫」ではないんです。
円座がダメな理由
患部の皮膚が引っ張られ、血行不良をおこす
今回は座って使用することを想定し、患部を仙骨部(お尻の尾てい骨周辺の骨)として解説していきます。
円座に座った際、まず始めに仙骨部の周辺に圧迫が生じます。この時は仙骨部が浮いているため、圧はかかっていない状況です。
次に仙骨が身体の重みで下方へ落ち込みます。
その際に、仙骨の周辺は円座により圧がかかっている状態のため、皮膚の伸縮が生じにくい状況になり、仙骨のすぐ下にある皮膚が仙骨に押されて下方向に異常に引っ張られる形となります。
すると、皮膚の下にある血管も引っ張られ、潰れてしまい、結果的に圧迫されているときと同じ血行不良の状態となります。
血行不良は褥瘡を招くとされているため、円座によって浮いている部分も褥瘡予防にはならないということになります。
周辺部への圧迫で新たな褥瘡リスクが生じる
周辺部は円座により圧迫を受けますが、穴が開いている影響で普通のクッションよりも余分に圧を請け負う形となります。また、円座クッションは商品によっては硬めのクッションも多いです。
結果的に圧が多くかかってしまい、新たに褥瘡を生じてしまうケースも非常に多いです。
なぜ褥瘡に悪影響なのに、円座が使われるの?
ここまでの解説を読んでくださった方は、

じゃあなぜ円座のクッションを使用しているひとがいるの?
と疑問に思われる方もおられるのではないでしょうか?
結論からいうと、「昔はそれが一般的だったから」です。
昔は褥瘡予防になると考えられていた
20-30年ほど前までは、褥瘡に関するエビデンスも少なく、褥瘡が生じている箇所を浮かすという考え方が一般的でした。ですので、主に病院や介護施設で、お尻の褥瘡対策として円座クッションを使用していたという歴史があります。
その名残として、未だに

褥瘡予防には円座クッションがよい
と勘違いしている方がいらっしゃり、介護施設や個人のお宅で使用される方がおられます。
褥瘡予防としての円座クッションの現在地
現在の褥瘡予防としての円座クッションの立ち位置として、2つの情報をご紹介します。
1つ目は厚生労働省の「補装具の種目,購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」という資料です。この資料では、2002年より車いす付属品のクッション分類で、「円座」という名称はなくなっています。つまり、「円座は車いすに使用するべきクッションではない」ということです。
また、日本褥瘡学会褥瘡予防・管理ガイドラインでは、
日本褥瘡学会褥瘡予防・管理ガイドラインより引用
円座を用いることは有効か?という問いに対して、
推奨レベルD(無効ないし有害である根拠があるので,行わないよう勧められる)
とされており、やはり勧められないという結論が出ています。
代わりにエアー・ジェルクッションを使用しましょう!
今現在円座のクッションを使用されている方は、

じゃあどんなクッションを使えばいいの?
という疑問が湧いてくると思います。
結論からいうと、エアークッションやジェルクッションなど、車椅子に特化したクッションの使用をお勧めします。
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください。
おわりに
本記事では、脊髄損傷に関する一般的な情報をお伝えしました。お読みいただき、ありがとうございました。
なお、本記事の内容は医学的助言を提供するものではなく、情報提供を目的としています。健康状態やリハビリについては、医療機関や専門家にご相談ください。
皆さんの生活に役立つ情報を今後も発信していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
個人的な悩みや、今後記事にして欲しい気になる情報があれば、こちらのGoogle Formにて承っております。匿名で投稿可能ですので、お気軽にご投稿下さい。
まとめ
- 円座は褥瘡予防にはならず、むしろ褥瘡を助長する
- 理由として、患部の皮膚が引っ張られ、血行不良をおこすため
- 代わりのクッションとして、エアークッションやジェルクッションなど、車椅子に特化したクッションの使用をお勧め
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