【週刊脊損ニュース】Vol.5 2025.3.24

脊損ニュース

「亜急性期脊髄損傷に対する iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究について

慶応大学は、亜急性脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療の臨床研究を、2020年12月から開始しました。
コロナの影響で、麻酔科医の確保なども含め、治験もままならない時期も長かったように思います。
それでも少しずつ症例を重ね、2024年11月に4例の経過観察が終了、2025年3月21日にその内容がプレスリリースされました。

慶応大学のプレスリリースはこちら
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/3/21/250321-2.pdf

その内容について以下に解説します。

研究結果

研究結果として、プレスリリースによると、

  • 4例の移植、1年間の経過観察を行い、有害事象は認められなかった
  • 受傷後52週時において、ISNCSCI total motor scoreはベースラインから13点の改善
  • AIS の評価では 1 症例がベースラインのA から C へ、別の 1 症例が A から D への改善が認められ、4 例中 2 例が A から C 以上へ改善
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/3/21/250321-2.pdfより引用

とされています。

まず、iPS細胞を用いた再生医療を行う上で、最も懸念されていたのが「腫瘍化のリスク」でした。したがって、今回4例の中では有害事象は認められなかったとの報告があり、当事者の方々も一安心されたのではないかと思います。

次に身体機能の改善についてですが、今回対象者をAIS:Aという、最も改善が見込みにくい損傷レベルの方で行っているため、最初から厳しいデータが出てくることも想定されていたと思います。
ですが、結果としてISNCSCIのスコアが高かったこと、AIS:A(完全麻痺)からC(不全麻痺だがおおよそ歩けないレベル)やD(不全麻痺でおおよそ歩けるレベル)へ移行したことは素晴らしいことだと思いますし、良い結果であるといえます

一方で、具体的なレベルは記載されていませんが、4例中2例はAのままだったと推測されます。
よく脊髄損傷の再生医療の中で、「救えるA(完全麻痺ではあるものの、神経の繋がりが維持されている状態)」と「救えないA(完全に神経が断裂してしまっている状態)」という言葉があります。
したがって、今回のiPS細胞治療では、救えるAが2例、救えないAが2例といった形だったと考えられ、この研究ではすべての方の能力を大幅に改善させることはできません。

もちろんこの研究と並行して、慶応大学を始めとして様々な研究をされているため、今回改善がみられなかった2例の方にも身体機能の回復が見込めるような治療法が出てくることが期待されます

また、今回の研究では、安全性・有効性の評価とはいえど、安全性の部分が大部分を占めており、有効性に関しては、4例のデータだけでは何ともいえない部分も多いです。
そしてリハビリにおいても、今回村山医療センターという脊髄損傷に特化した病院と提携して行っているため、一般的な病院で行われるリハビリよりも機器やマンパワー・経験といった様々な面で質の高いリハビリを提供できていると考えられ、iPS細胞治療以前にベースラインと比較して良くなる可能性が高いと考えられます。

この辺りに関しては、今後症例数を増やして研究が続いていくので、その結果を楽しみに待ちましょう!

今後の展開

データ解析の結果をもとに総括報告書を整えたのち、本研究の成果をもとに、本
治療法の実用化にむけた取り組みを行っていく予定

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/3/21/250321-2.pdfより引用

今後の展開については具体的には書かれていませんが、さらに治験が続いていくと思われます。

国は審査していないのに… 自由診療の“再生医療” 広告に注意

国は審査していないのに… 自由診療の“再生医療” 広告に注意 | NHK
【NHK】病気やけがで失った臓器や組織を再生させる「夢の治療」として注目されてきた再生医療。最近は、しわやたるみの改善など美容目的…

以前脊髄障害医学会から、脊髄損傷への再生医療に関する自由診療に対する注意喚起というお知らせが出ていることをご紹介しましたが、NHKでも同様の内容について注意喚起がなされていました。

自由診療の再生医療にて、「厚生労働省が認可する再生医療」という記載をされている医療機関があります。しかし、実際には再生医療を実施する医療機関は、事前に第三者の専門家などで作る委員会で治療計画の審査を受け、了承されたものを厚生労働省に届け出るという形をとっています。

つまり、厚生労働省自体が審査を行って、その合否を判断しているわけではないということです。

しかしどうでしょう、「厚生労働省が認可する再生医療」と言われると、

この治療は厚生労働省からのお墨付きなんだ

と勘違いしてしまう方がおおよそ75%程度いるとのことです。

これは明確に医療広告ガイドラインに違反しており、早期に各医療機関が修正する必要があります。

また、この記事では見分け方について

  • “お墨付き”や“権威づけ”に注意
  •  “ほぼすべて”に注意
  • 書籍を出している医師だからと信用するのはNG
  • セミナーやLINEへの誘導に注意
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250322/k10014756071000.htmlより引用

としており、自由診療の再生医療を受ける際は、これらを自分自身で調査する必要があります。

おわりに

本記事では、脊髄損傷に関する一般的な情報をお伝えしました。お読みいただき、ありがとうございました。
なお、本記事の内容は医学的助言を提供するものではなく、情報提供を目的としています。健康状態やリハビリについては、医療機関や専門家にご相談ください。
皆さんの生活に役立つ情報を今後も発信していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

個人的な悩みや、今後記事にして欲しい気になる情報があれば、こちらのGoogle Formにて承っております。匿名で投稿可能ですので、お気軽にご投稿下さい。

脊髄損傷研究所

認定理学療法士(脊髄障害)/脊髄損傷の方を100例以上担当/再生医療/BMI/「無知こそ最大のリスク」をテーマに、脊髄損傷の当事者の方に向けて、脊髄損傷に関するトピックスを、医学的な知識がない方でも理解ができるよう、分かりやすく解説するブログ「SCI LAB」を運営。

脊髄損傷研究所をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました