【週刊脊損ニュース】Vol.3 2025.1.20

脊損ニュース

交通事故で脊髄損傷、国が定めたリハビリ期間180日で退院迫られる実態…最長2年のモデル事業で支援検証

交通事故で脊髄損傷、国が定めたリハビリ期間180日で退院迫られる実態…最長2年のモデル事業で支援検証
【読売新聞】 交通事故で重度の脊髄損傷を負って入院中の患者が、同じ病院で最長2年間入院してリハビリを受けられる国土交通省のモデル事業が福岡、大阪、神奈川3府県の4病院で行われている。国が定めた重度脊髄損傷のリハビリ期間(180日)内

こちらの記事では、NASVAの脊髄損傷者に対するモデル事業についての紹介がされています。

NASVA(National Agency for Automotive Safety and Victim’s Aid)は、交通安全や交通事故の被害者支援を行っている組織です。交通事故による脊髄損傷は重大な問題であり、NASVAはこれに関連する支援や活動を行っています。

その取り組みの1つとして、交通事故の被害者、特に脊髄損傷などの重度の障害を負った被害者に対して支援を行っています。

具体的な取り組みとしては、

  • 事故後のサポート
  • リハビリテーションの支援
  • 医療機器や福祉機器の支援

などがありますが、今回のニュースは「リハビリテーションの支援」の項目のモデル事業について紹介されています。

交通事故で重度の脊髄損傷を負って入院中の患者が、同じ病院で最長2年間入院してリハビリを受けられる国土交通省のモデル事業が福岡、大阪、神奈川3府県の4病院で行われている。

国が定めた重度脊髄損傷のリハビリ期間(180日)内では、リハビリが十分でないにもかかわらず、退院を余儀なくされるケースが起きており、同省は事業を検証し、事故被害者の支援につなげる。

読売新聞オンラインより引用

具体的にモデル事業に参加している病院としては、

  • 福岡県:久留米リハビリテーション病院、聖マリアヘルスケアセンター
  • 大阪府:愛仁会リハビリテーション病院
  • 神奈川県:神奈川リハビリテーション病院

となっています。

実際現場でリハビリテーションを行っている身としては、それぞれの身体状況にもよりますが、180日以内で納めるということはなかなか厳しいといった現状があります。
まずは交通事故により脊髄損傷になった方が対象で、それ以外の要因で脊髄損傷になられた方は対象とならないという点がありますが、このような事業を通して、180日以上のリハビリテーションがその方にどの程度の身体状況の変化をもたらすのかを示すことが重要になりそうです。

ただ、自動車技術の発展とともに、交通外傷での受傷例は年々減少傾向にあり、高齢者の転倒による受傷が増えてきている現状もあるため、このようなモデル事業での改善を皮切りに、他の形で異なる受傷機転の方も支援が広がることを期待したいところです。

ご自身が対象になるのか、もう少し詳しい事業内容を知りたい方は、以下のHP、pdfをご参照ください。

重度脊髄損傷者受入環境整備事業(モデル事業)の概要/独立行政法人自動車事故対策機構 ナスバ(交通事故)
独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)のサイト、自動車・チャイルドシートの安全性能評価の情報、運行管理者等指導講習、運転者適性診断による自動車事故の発生防止、介護料の支給、育成資金の貸付、家庭相談など自動車事故被害者や交通遺児への支援等役...

パンフレット:https://www.nasva.go.jp/sasaeru/pdf/sekison_pamphlet.pdf

第一種医薬品製造販売業許可を取得  クリングルファーマ

第一種医薬品製造販売業許可を取得  クリングルファーマ | 日刊薬業 - 医薬品産業の総合情報サイト
クリングルファーマは10日、第一種医薬品製造販売業許可を大阪府から取得したと発表した。同社は、脊髄損傷急性期に対する治療薬オレメペルミン アルファ(遺伝子組換え、一般名)の研究開発に注力しており、製…

プレスリリース:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4884/tdnet/2547631/00.pdf

クリングルファーマは、脊髄損傷を含む難治性疾患に対して再生医療の新たな道を切り開くことを目指して、2010年代初頭より治療薬の開発を進めてきました。

研究初期には幹細胞技術を用いた治療法に焦点を当てていましたが、神経修復因子を含む治療薬の開発にシフトし、神経細胞の再生を促進する特定の分子やペプチドの研究が行われました。この研究は、脊髄損傷による機能喪失を部分的に回復させる可能性が示唆され、動物実験での成功が報告されました。

2022年には、ヒト試験が開始され、臨床試験において有望な結果が得られました。これにより、再生医療の実用化に向けた大きな進展を遂げ、今後の治療選択肢として期待されています。

そしてこの度ついに、オレメペルミン アルファ(遺伝子組換え)の第一種医薬品製造販売業許可を取得し、本格的に製造販売の準備を進めていくことになりました。

HGFは、脊髄損傷においては急性期の再生医療というカテゴリーに分類され、受傷後72時間以内に使用することで、受傷によるダメージをなるべく最小限に抑え、その後のリハビリや、亜急性期・慢性期の脊髄損傷再生医療を行う際になるべく良い状態で繋げていくための治療です。
つまり、今現在脊髄損傷を受傷されている方向けの再生医療ではなく、これから受傷される方に対して提供されるものであるため、世間の注目はステミラックやiPS細胞を用いた亜急性期・慢性期の再生医療よりも低くなっている印象があります。

しかし、脊髄損傷において、初期になるべく良い治療を受けることができれば、亜急性期・慢性期の状態は大きく変わってくると予想され、実際に第Ⅲ相臨床試験ではそのような結果が出てきています。

この薬が販売、多くの急性期病院にストックされ、いつでも誰でも点滴にてこの治療が受けられる日が来るのもそう遠くないかもしれないですね!

クリングルファーマについてもっと詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

脊髄損傷急性期|研究開発|クリングルファーマ株式会社
クリングルファーマ株式会社の脊髄損傷急性期発に関する研究開発の紹介です。

おわりに

本記事では、脊髄損傷に関する一般的な情報をお伝えしました。お読みいただき、ありがとうございました。
なお、本記事の内容は医学的助言を提供するものではなく、情報提供を目的としています。健康状態やリハビリについては、医療機関や専門家にご相談ください。
皆さんの生活に役立つ情報を今後も発信していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

個人的な悩みや、今後記事にして欲しい気になる情報があれば、こちらのGoogle Formにて承っております。匿名で投稿可能ですので、お気軽にご投稿下さい。

脊髄損傷研究所

認定理学療法士(脊髄障害)/脊髄損傷の方を100例以上担当/再生医療/BMI/「無知こそ最大のリスク」をテーマに、脊髄損傷の当事者の方に向けて、脊髄損傷に関するトピックスを、医学的な知識がない方でも理解ができるよう、分かりやすく解説するブログ「SCI LAB」を運営。

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