【2025年版】褥瘡を予防するには?車椅子ユーザーが知っておくべき個人的危険因子

最新知見

今回は、2025年1月8日に公開されました、「Personal risk factors for pressure injuries among wheelchair users: an umbrella review of new insights in 2024」という論文を基に、車椅子ユーザーの方が知っておくべき褥瘡の危険因子についてお話ししようと思います。

この論文は、2024年までに公開された褥瘡関連の論文をまとめ、その要点を抽出した論文となっており、この記事を読めば最新の褥瘡危険因子について学ぶことができます。実際の論文をご覧になりたい方は下記をクリックしてアクセスしてみてください。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17483107.2024.2448161?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org#abstract

また、褥瘡予防として、除圧はとても重要です。
除圧の時間や頻度について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

はじめに

皆さんは褥瘡のリスクを高める要因というと、何を思い浮かべますか?
私は「高齢」や「肥満」といった要因が浮かんできましたが、皆さんはいかがでしょうか?

褥瘡を発生するリスクは多岐に渡り、参考書レベルでも複数の要因について触れられていますが、これまでに発表されているすべて論文をまとめて総括するような報告はありませんでした。
今回カナダのClémence Paquinという方が、初めて総括を行った論文が、「Personal risk factors for pressure injuries among wheelchair users: an umbrella review of new insights in 2024(車椅子使用者の褥瘡の個人的危険因子:2024年の新たな知見の包括的なレビュー)」となります。

以下に引用を交えながら詳しく説明していきます。

研究目的

褥瘡は、脊髄損傷を始めとする車椅子利用者にとっては、大きな健康問題となるとされています。
そんな褥瘡ですが、なんと脊髄損傷の方で、車椅子を利用されている場合、生涯で褥瘡を発生する確率は80%、若年車椅子利用者の55%は、受傷後10年以内に少なくとも1回の褥瘡を経験するとされています。

さらに、褥瘡の治療としては、平均の入院期間は11週間で、おおよそ7000ドルの費用が発生するとされており、時間と費用の面で個人の支出や医療保険としての国の負担となります。

そのような背景の元、今回その原因を一から見つめ直すために、今回の研究がスタートしました。

研究方法

21 件の研究が包含基準を満たしました。
これらのうち、43% はシステマティック レビュー、24% はメタ分析、19% は文献レビュー、9% はスコーピング レビュー、5% はナラティブ レビューでした。

Personal risk factors for pressure injuries among wheelchair users: an umbrella review of new insights in 2024

とされています。実に5797件の論文を評価し、基準を満たした研究が21件でした。その21件の論文を精査し、包括的に原因を探っていきました。

研究結果

一般的な健康状態、臨床状態、初期病状、環境/ライフスタイル、個人関連、複合リスク要因グループに分類された 33 の個人的要因が明らかになりました。車椅子使用者に頻繁に見られる主な個人的リスク要因には、高齢、肥満、脊髄損傷 (SCI)、高レベルの SCI、糖尿病、感染症、失禁、不動、呼吸および灌流障害、感覚知覚の問題、および身体活動の低下などがあります。
~中略~
バイアスのリスクが不明瞭な研究で報告された唯一の要因は、
アルコール摂取であった。

Personal risk factors for pressure injuries among wheelchair users: an umbrella review of new insights in 2024

とされています。また、この他にも喫煙や婚姻状況なども発生率に関連があるのではないかと示唆されています。

感想

褥瘡のリスクとなる要因としては、概ね想定通りといった論文にはなっていました。
しかし、喫煙状況やアルコール摂取、婚姻状況など、これまでと違った新しい視点についても議論がなされており、非常に興味深い報告となりました。

また、これらをそれぞれ単体としてみていくわけではなく、複合的な問題として捉え、複数の項目に当てはまる方は可能な範囲で要因を除去する、あまり当てはまらなかった方はこのような要因があるということを知識として留めておく程度で良いのではと考えています。

おわりに

本記事では、論文に関する最新の研究結果をご紹介しました。
研究の内容は、執筆時点での最新のエビデンスに基づいていますが、今後の研究によって内容が変更される可能性があります
本記事は、科学的な情報の提供を目的としており、医学的助言や個別の治療を推奨するものではありません。リハビリや治療については、医療機関や専門家にご相談ください。
今後も、脊髄損傷に関する最新の情報をわかりやすくお届けしていきますので、ぜひご覧ください。

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脊髄損傷研究所

認定理学療法士(脊髄障害)/脊髄損傷の方を100例以上担当/再生医療/BMI/「無知こそ最大のリスク」をテーマに、脊髄損傷の当事者の方に向けて、脊髄損傷に関するトピックスを、医学的な知識がない方でも理解ができるよう、分かりやすく解説するブログ「SCI LAB」を運営。

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まとめ

  • 脊髄損傷の方で、車椅子を利用されている場合、生涯で褥瘡を発生する確率は80%、若年車椅子利用者の55%は、受傷後10年以内に少なくとも1回の褥瘡を経験する
  • 車椅子使用者に頻繁に見られる主な個人的リスク要因には、高齢、肥満、脊髄損傷 (SCI)、高レベルの SCI、糖尿病、感染症、失禁、不動、呼吸および灌流障害、感覚知覚の問題、および身体活動の低下などがあります。
  • 複数の項目に当てはまる方は可能な範囲で要因を除去する、あまり当てはまらなかった方はこのような要因があるということを知識として留めておく程度で良い

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