【最新知見】BMI技術がドローン操作を実現~メカニズムについて解説~

最新知見

はじめに

皆さんは、頭で念じただけでドローンを操作できると言ったら、信じますか?

BMI(BCI)技術は近年目まぐるしい発展を遂げており、PCなどのデバイス操作のみならず、ロボットアームを動かす技術の研究などが進んできています

そして今回、「頭で念じて仮想ドローンを操作できた」という報告が出てきました。

この記事では、2025/1/20に世界的な権威のある「nature」から出版された

A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis(直訳:麻痺のある人の指の解読とクワッドコプターのゲーム制御のための高性能脳コンピューターインターフェース)

という論文について解説していきたいと思います。

SCIの方
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BMIって何?

SCIの方
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BMIのこれまでの経過が知りたい

とおっしゃられる方は、下記の記事も併せてご一読下さい。

以下はnatureのニュース記事になります。

Paralysed man flies virtual drone using brain implant
Device that links neural signals to fine movements provides unprecedented control over speed and direction in a video-ga...

この記事では、

複数のものを同時に制御できるようにする方法に焦点を当てている

https://www.nature.com/articles/d41586-025-00167-3

としており、従来のBMI技術よりもより日常生活に近いコントロールが可能となることを目的として研究・治験が行われているとされています。

以下に論文を引用しながら解説していきます。

研究の目的

目的として、

脊髄損傷などの、身体に麻痺のある方に対してのBMI技術の性能を評価すること。

特に指の動きを司る脳領域と、ドローンの操作を結び付け、簡単なゲームができるようになることを目標にした

A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

としています。

これまでのBMI技術の研究報告では、1つのことを念じる→1つの行動(デバイス操作)が生じるという研究でした。
しかし、今回はドローン操作、いわゆる「上下左右」など、複数の情報を同時に処理する必要がある課題を目標に設定しています。ここがこれまでのBMI技術とは異なる点であり、今回の研究が注目されている所以とも言えます。

研究対象・方法

研究対象となった患者様は、

69歳、高位脊髄損傷の方で、腕や手の動きはほとんどない方

A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

です。

このような身体状況の方では、視線入力デバイスや、首の動きで車椅子を動かすことが一般的です。
しかし、この研究で対象者の方は、仮想ドローンを動かすことに成功します。

研究方法は、

  1. 非侵襲的な脳波計測技術である脳波(EEG)を使って、脳からの信号をキャプチャし、指の動きに対応する信号を抽出
  2. 脳波を用いてゲームの操作を制御するインターフェースの開発
A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

を行いました。

研究結果

研究結果として、

  • 対象者の方は、ご自身で指を動かすことができない方でしたが、実際に指を動かしていなくても、脳波を通じてその動きを読み取ることが可能であった
  • BMIシステムを用いて、ドローンを上下左右に操作するタスクを実行し、BMIシステムによってドローンを飛行させることができた
A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

としています。

以下は実際の論文の表ですが、親指の動きで前後左右を、人差し指と中指の動きでスピードの調整を、薬指と小指の動きで左右の回転が行えるように設定をしています

A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

以下が実際に仮想ドローン操作を行っている動画になります。

動画内では指が動いているように表現されていますが、この方のご自身の指は麻痺のためほとんど動いていません。したがって、この指の動きは指の動きを司どる脳領域の脳波を読み取り、その動かしているイメージを映し出している動画になっています。ここまで正確にイメージできるなんてすごいですよね。

考察

考察として、

  • 指の動きの脳領域は広いため、かなり高精度で信号をキャッチできることから、新たな治療法や支援技術としての可能性が示唆される
  • 健常者がコントローラーを操作するような、複雑な動きも表現できるようになる可能性を秘めている
A high-performance brain–computer interface for finger decoding and quadcopter game control in an individual with paralysis

としています。

身体を動かす脳領域は、その身体部位によって占める割合が変わってきます。
例えば足の指は手の指ほど細かい動作を必要としないため、脳領域は少なく、手の指は身体の中で最も繊細な動作を要求される部位ですので、脳領域も多くなっています
今回の研究で脳波を読み取る部位として手の領域が選択されたのも、上記の理由です。

私個人としては、最終的にはロボットスーツなどを着用し、脳の信号を基にロボットスーツが身体の動きをアシストするようなデバイスが出てくると予想しています。
もしそのような技術が実現すれば、リハビリテーションにおいても非常に魅力的な話かと思いますので、Neuralinkの埋め込み型のデバイス研究と共に、この研究もさらなる発展を遂げて欲しいです。

おわりに

本記事では、論文に関する最新の研究結果をご紹介しました。
研究の内容は、執筆時点での最新のエビデンスに基づいていますが、今後の研究によって内容が変更される可能性があります
本記事は、科学的な情報の提供を目的としており、医学的助言や個別の治療を推奨するものではありません。リハビリや治療については、医療機関や専門家にご相談ください。
今後も、脊髄損傷に関する最新の情報をわかりやすくお届けしていきますので、ぜひご覧ください。

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脊髄損傷研究所

認定理学療法士(脊髄障害)/脊髄損傷の方を100例以上担当/再生医療/BMI/「無知こそ最大のリスク」をテーマに、脊髄損傷の当事者の方に向けて、脊髄損傷に関するトピックスを、医学的な知識がない方でも理解ができるよう、分かりやすく解説するブログ「SCI LAB」を運営。

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